毎年、世界中で少なくとも約70万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられている。この問題に対して有効な対策が講じられなければ、2050年には年間死亡者数は1,000万人にまで上昇するとの予測もある。国内では、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、薬剤耐性菌の中でも頻度が高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)が原因となる菌血症による2017年の死亡者数を約8,000人と推定している。
抗菌薬は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、患者の予後の改善に大きく寄与してきた。一方で、AMRは国内の医療システムの将来を脅かす深刻な問題として顕在化しており、この増大する脅威に対処するための強固な政策が必要となっている。