薬剤耐性(AMR)


国内外における課題

毎年、世界中で少なくとも約70万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられている。この問題に対して有効な対策が講じられなければ、2050年には年間死亡者数は1,000万人にまで上昇するとの予測もある。国内では、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、薬剤耐性菌の中でも頻度が高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)が原因となる菌血症による2017年の死亡者数を約8,000人と推定している。

抗菌薬は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、患者の予後の改善に大きく寄与してきた。一方で、AMRは国内の医療システムの将来を脅かす深刻な問題として顕在化しており、この増大する脅威に対処するための強固な政策が必要となっている。


政策の動向

グローバルにおける政策動向

  • 2015年5月:世界保健機関(WHO)総会で「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」が採択された。
  • 2015年6月:先進国 7カ国首脳会議(G7)エルマウサミットにおいて、薬剤耐性が主要課題の一つとして扱われた。
  • 2016 年:G7伊勢志摩サミットにおいて、薬剤耐性に関する取組みの強化を確認した。
  • 2019年:G20大阪サミットにおいて、AMRに対する世界的な取組みであるワン・ヘルス・アプローチに基づく努力を推進すべきという意志を確認した。

日本における政策動向

  • 2015年11月:「薬剤耐性(AMR)タスクフォース」を厚生労働省に設置。
  • 2015年12月:「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」の枠組みの下に、「薬剤耐性に関する検討調整会議」を設置。
  • 2016年4月:「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」において、我が国として初めてのアクションプランが決定された。

HGPIの活動

日本医療政策機構は、AMRに関する専門家会合を2016年から開催してきた。実効性のあるAMR対策を進めるためには、産官学民が協働し、連携を深めるための中立的な議論の場の設定が、要請され続けていた。これを受けて、2018年11月に産官学民連携のプラットフォームとして、AMRアライアンス・ジャパン(以下、アライアンス)が設立された。アライアンスは2019年7月に「AMRアライアンス・ジャパン提言:薬剤耐性(AMR)対策に向け日本政府が果たすべき役割」(以下、提言)を発表し、提言に含まれる7つのテーマについて政策立案者らへの働きかけ(以下、アドボカシー)を行っている。


  • 第1回 AMR日米専門家会合 「AMR の世界的脅威と日本が果たすべき役割」(4月18日)
  • 第2回 AMRグローバル専門家会合「AMRアクションプラン策定から一年 ~国内外におけるAMR政策の進展と、新たな課題~」(7月21日)
  • AMRグローバル専門家会合「Tokyo AMR One-Health Conference サイドイベント~アクションプラン推進に向けて国内外で取るべき施策~」(11月14日)
  • キックオフ・ミーティング 「『AMRアライアンス・ジャパン』設立 ビジョンの設定に向けた課題整理」(9月6日)
  • AMRアライアンス・ジャパン設立記念 グローバル専門家会合&記者発表(11月8日)
  • グローバルヘルスに関する国会議員ブリーフィング(12月21日)
  • AMRアライアンス・ジャパン提言 薬剤耐性(AMR)対策に向け日本政府が果たすべき役割(7月11日)
  • AMRアライアンス・ジャパン「メディア・ブリーフィング」(7月26日)
  • AMRアライアンス・ジャパン「Webサイトがオープン」(10月1日)
  • AMRアライアンス・ジャパン「薬剤耐性(AMR)対策に関する政策提言を加藤 勝信 厚生労働大臣に手交」(10月3日)
  • AMRアライアンス・ジャパン 緊急フォーラム「抗菌薬の安定供給と抗菌薬市場の危機~G20に求められる世界規模での官民パートナーシップ~」(10月7日)
  • 第1回 医療政策勉強会 「30分で伝える医療政策最前線」「薬剤耐性菌について―TOKYO 2020と感染症 薬剤耐性菌(AMR)とは―」(11月16日)
  • 第1回 日経アジア・アフリカ感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)AMR部会(1月22日)
  • 第2回 医療政策勉強会 「30分で伝える医療政策最前線」「抗生物質がない?どうする?ー感染症から国民を守る産業育成政策とはー」(3月22日)
  • 日経アジア・アフリカ感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)第2回AMR部会(4月27日)
  • 「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2021~」に求められる事項(5月14日)
  • 国内外のAMRに関する情報をまとめたリソースページを公開(7月31日)
  • 第94回日本感染症学会総会 AMRアライアンス・ジャパン シンポジウム「今、私たちに求められる行動」(8月21日)
  • サーベイランス整備により感染症と薬剤耐性対策の強化を(9月3日)
  • 日経アジア・アフリカ感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC) 第3回AMR部会(9月23日)
  • AMR対策を促進させる診療報酬制度の改定要望書作成を議論するラウンドテーブル・ディスカッション(9月28日)
  • 国内外の薬剤耐性(AMR)の現状と対策に関するポリシー・ブリーフ(11月20日)
  • 第7回日経・FT感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC) AMR部会(11月7日)

HGPIの取り組む重点分野・ミッション

HGPIは以下のAMRアライアンス・ジャパンのビジョン・使命・提言に基づき活動する。

ビジョン

薬剤耐性菌による感染症から国内外の市民を守る強力な医療システムの構築。

使命

AMRアライアンス・ジャパンは国内外のAMR対策を前進させ、国民の公衆衛生の向上に資する活動を行う。

提言

01 医療現場の現状を踏まえた抗菌薬の適正使用の推進
02 国内のAMRに関する危機の管理及びサーベイランス・システムの構築
03 積極的な耐性菌スクリーニング検査及び迅速診断検査等を実施しやすい体制の整備
04 国民及び医療従事者へのAMRに関する学修支援の整備
05 抗菌薬開発を促進するインセンティブ・モデルの策定
06 抗菌薬の安定供給
07 国内外の好事例や教訓を共有するための国際連携


HGPIの今後の活動の柱

AMR関連法規へアライアンスの提言を組み込むための活動
AMR対策の重要性を発信するための活動
産官学民によりAMR政策を議論する場を提供するための活動

最終更新日:2021年3月