6.2後発医薬品


後発医薬品の定義

医薬品には、最初に開発した医薬品メーカーだけが独占的に製造・販売できる期間(特許の有効期間及び有効性・安全性を検証する再審査期間)があり、この期間に製造・販売される医薬品を先発医薬品と呼ぶ。

一方、この期間が終われば公開されている特許情報等をもとに、同じ有効成分を含む薬を他の医薬品メーカーでも製造・販売することができる。こうして発売される、先発医薬品と同じ有効成分を含む薬を後発医薬品と呼ぶ。

後発医薬品は、先発医薬品と有効成分が同じであり、効能・効果、用法・用量が原則的に同一である一方、先発医薬品に比べて低価格であるという特徴がある。また、先発医薬品が最初に開発したメーカーの独占であるのに対して、後発医薬品は複数のメーカーが製造・販売するケースも多い。そのため欧米では、商品名で呼ばれることの多い先発医薬品と対比して、有効成分の一般名(generic name)で処方されることが多いことから、「generic drug」という言葉で呼ばれており、日本でも「ジェネリック医薬品」と呼ばれることもある。


後発医薬品の有効性・安全性

後発医薬品を製造・販売するにあたっては、先発医薬品の場合と異なり、有効成分の有効性・安全性を検証するための治験を行う必要はない。先発医薬品の承認過程において、すでに有効性・安全性が確認されているからである。ただし、同じ有効成分をもつ薬であっても、製造工程などが異なれば、同じように作用しない可能性があることから、後発医薬品の製造・販売においては先発医薬品と有効性・安全性が同等であるかどうかについて審査される。審査内容は、主に「規格及び試験方法」「安定性試験」「生物学的同等性試験」の3項目であり、これらの審査によって後発医薬品が先発医薬品と同等であることが示されれば、有効性・安全性に問題がないことが確認され、承認されることとなる。




<コラム>厚生労働省の後発医薬品に対するスタンス

日本では国民皆保険制度により、一定の自己負担で、必要な良質の医療を平等に受けることができる。その一方で医療技術の進歩、急速な高齢化等の要因により医療費は増加し続け、医療財源が逼迫しつつあることから、国民皆保険制度の継続が不安視されている。この国民皆保険制度を維持し、医療の質を確保しながら効率的な医療サービスの提供を継続するため、ジェネリック医薬品の使用を促進する方針を政府は採っている。

そこで、2015年6月の閣議決定において、2017年に後発医薬品の使用割合を70%以上とするとともに、2020年9月までに80%とし、できる限り早期に達成するという目標を定めている。

後発医薬品の処方・調剤

日本の公的医療保険制度においては、医師が医薬品を処方する際には、有効成分の一般名を用いることが原則となっている。ただし医師が処方箋に署名等を行えば、先発医薬品を指定し、後発医薬品への変更をしないように指示することもできる。また薬局は、医師からの特段の指示がない限り、患者への説明と同意を得たうえで後発医薬品を使用することが推奨されており、後発医薬品を積極的に調剤する薬局に対するインセンティブも設定されている。

なお、後発医薬品の処方・調剤について、日本と同様の仕組みを採っている国としては、フランスが挙げられる。フランスでは、薬局における後発医薬品による代替調剤を拒否した場合には、患者が薬局で全額自己負担をしたうえで、別途償還の申請が必要となる仕組みを導入するなど、後発医薬品の使用を強力に推進している。

一方、日本と異なる仕組みを採っている国としては、アメリカが挙げられる。アメリカでは、患者が契約する保険の内容によって使用できる医薬品が決まっており、医師や薬局による自由度は低く、どの医薬品を採用するかについては、保険者であるHMO(Health Maintenance Organization)が製薬会社との交渉によって決定している。


後発医薬品の薬価

後発医薬品は治験が不要であることから、研究開発費用が先発医薬品に比べて大幅に少なくて済むため、製薬会社としては先発医薬品よりも安い価格設定であっても、利益を確保することが可能である。そのため日本の公的医療保険制度においては、後発医薬品の償還価格は、先発医薬品の半額以下という大幅に安い水準に設定されることが通例である。

また日本の公的医療保険制度においては、償還価格を決定する際に、市場の実勢価格を参照することとしている。そのため、同じ有効成分を含む後発医薬品が複数あり、市場での価格競争が起きれば、それを反映してより安価な償還価格が設定されることとなる。


後発医薬品の薬価決定ルール

後発医薬品が承認され、公的医療保険の適用対象として選定(薬価基準収載)されるタイミングは、年に2回(6月と12月)ある。

後発医薬品が初めて薬価基準収載される場合、基本的には先発医薬品の薬価の50%とするルールとなっている。ただし例外規定が2つあり、内服薬については、薬価基準への収載希望品目数が10品目を超えた場合に先発医薬品の薬価の40%、バイオ後続品(バイオシミラー)については先発医薬品の70%にそれぞれ設定される。

さらに薬価については、最初に薬価基準に収載された後、市場実勢価格の変化に基づき、2年ごとにすべての薬価基準収載医薬品を対象に実施される薬価改定において、少しずつ引き下げられることとなっている。その際、複数の後発医薬品があるケースにおいては以下の通り、価格帯ごとに一つの価格を設定する措置がとられている。

  • 最高価格の30%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均)として収載
  • 最高価格の30%以上、50%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均)として収載
  • 最高価格の50%以上の算定額となる後発品を一つの価格(加重平均)として収載