2.1日本の統治機構の概要

日本国憲法は1946年に制定され、1947年に施行されたもので、日本の議会制度と三権分立の基本的な構造、すなわち立法府、行政府、司法府のあり方について定めている。これにより、国の権限が三権に分立され、互いにチェックし合い、均衡を保つ仕組みが成り立っている。


立法府

日本において立法府とは唯一の立法機関である国会を指す。国会は衆議院と参議院の2つの議院を指し、それぞれ選挙により選ばれた国民の代表によって構成される。通常国会は1月から150日間であり、議員は会期中に少なくとも1つの常任委員会の委員を務める。通常国会の会期は一度のみ延長が可能とされている。



<コラム>頻繁な国政選挙

日本では、国政選挙が頻繁に行われている。2005年から2015年までの10年間で衆参合わせて7回、実に1年半ごとに大きな選挙が行われていることとなる。   政権選択選挙となる衆議院選挙は、その任期4年の満了を待たずに解散されることが多いため、過去10年では2年半に一回程度の頻度で選挙が行われた。また3年に1回、議員の半数が改選される参議院選挙は、政権に対する中間評価といった意味合いもあり、政権運営に極めて大きな影響を与える。さらにこれに加え、4年に1回の統一地方選挙や、実質的に与野党の争いとなる自治体首長選挙などが加わるため、頻度はさらに増す。 この結果、政府・与党や各政党は常に「選挙」を気にしなければならず、政治が不安定になったり、選挙の投票率が高く大きな政治的影響力を持つ高齢者寄りの政策が通りやすい「シルバー民主主義」を生む一因になっているという見方もある。

 

行政府

行政府とは、行政権を有する国の機関を指しており、内閣総理大臣をトップに置く。内閣総理大臣は、国会議員の中から衆議院により指名され、その後天皇により正式に任命される。内閣は内閣総理大臣(首相)及び総理大臣によって指名された国務大臣により構成されている[1]。内閣官房は内閣及び内閣総理大臣を支える役割を持つ。また、憲法の規定により国務大臣の過半数は国会議員の中から選出される。国務大臣は、衆議院において内閣不信任案が可決(または内閣信任案が否決)された場合、または内閣総理大臣の罷免によってのみ解任される。内閣不信任案が可決(または内閣信任案が否決)された場合、議決から10日以内に衆議院の解散または内閣閣僚の総辞職となる。内閣とは、厚生労働大臣や財務大臣などの国務大臣によって構成される。中央省庁は様々な政策を執行する場であり、また、内閣提出法案の原案作成が行われる場でもある[2]。


司法府

司法府は、最高裁判所及び4種類の下級裁判所から構成される。最高裁判所は違憲審査権を有し、国が定めた法律及び内閣による命令、規則、処分が憲法に適合するかを判断する役割を担う。最高裁判所長官は内閣の指名に基づき天皇によって任命され、その他の14名の最高裁判事は内閣によって任命される。最高裁判所の裁判官は任命後に初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査を受け、その後は70歳で定年を迎えるまで10年間隔で再審査を受ける。投票者の多数が罷免を可とした場合は当該の裁判官は罷免となるが、現在に至るまで国民審査による罷免の実例はない。最高裁判所以外の下級裁判所とは、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所を指す。裁判の多くは1〜3名の判事により行われる。2009年より、裁判員制度により刑事事件の裁判に国民の意見が取り入れられるようになった[3]。


コラム:官邸主導

かつて、日本の政治や政策立案は「官僚主導」と呼ばれた。各省庁と、自民党の「族議員*」、自民党政務調査会などが政策決定権を独占、主導していたというものである。しかし、2001年に小泉純一郎が内閣総理大臣になると、状況は一変する。小泉は自民党族議員や一部の省庁を「抵抗勢力」と位置付け徹底した改革路線を実施。閣僚人事や重要な政策決定で、自民党と省庁の意向を時には無視して、小泉ら首相官邸が主導した。省庁と族議員の力を削いだ一連の動きは、「官邸主導」と呼ばれ、現在もその傾向が観察できる。医療政策の重要な方針決定においても、厚生労働省だけではなく、首相官邸が方針を決定することがしばしばあるが、「族議員」の影響力も依然として極めて大きい。


*特定省庁との関係が強く高い専門性を持つ国会議員。たとえば、厚生労働行政に精通した議員は「厚労族議員」と呼ばれる。多くの場合、自民党厚生労働部会長や厚生労働省の大臣、副大臣経験者などがそれにあたり、有力議員として政策に大きな影響力を持つ。

参考文献

[1] 首相官邸「内閣制度と歴代内閣」https://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/1-2-1.html(アクセス日2018年4月16日)

[2] 内閣府「組織・業務の概要2018:内閣府パンフレット」http://www.cao.go.jp/about/pmf_index.html(アクセス日2018年1月30日)

[3] 裁判所「裁判員制度」http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/saibanin_jissi_jyoukyou.html(アクセス日2018年1月30日)