【2018年版】7.2診療報酬制度

診療報酬とは、医療機関や薬局が医療保険の適用範囲内の医療サービスや医薬品を提供した際に、対価として受け取る料金を指す。診療報酬は点数化されており、1点10円として評価されている。厚生労働省は医療サービス、医療機器及び医薬品に対する診療報酬点数と算定要件を定めており、国内における全ての医療提供者がその決定を遵守しなければならない。また、診療報酬点数として定められているよりも高額な医療費を請求することは禁止されており、保険診療と保険外診療の併用(混合診療)も原則として認められない。ただし、保険外併用療養費制度として、既に一部保険診療との併用が認められているものもある。保険外併用療養費制度には、保険導入のための評価を行う評価療養と患者申出療養があり、保険導入を前提としていないものとして選定療養がある[6]。


診療報酬の仕組み(出来高払い、DPC)

診療報酬制度には出来高払い方式と、診断群分類包括支払い方式(DPC)方式がある。

1961年に現在の医療保険制度の基盤が確立して以降、診療報酬制度は出来高払い方式を基本としてきた。保険適用内の医療サービス・医薬品・医療機器に個別に設定された点数に基づいて各医療機関が実際に行った医療行為に対する診療報酬を算出し、診療報酬点数を元に保険者から払い戻しを受ける仕組みが診療報酬制度である。

DPC導入の経緯>

DPCとは、人口の急速な高齢化に伴い、医療費・入院治療の期間・医療サービスの需要に対する関心が高まる中で2000年代前半に始まった日本独自の診療報酬制度である。

1998年から2004年には試行として、国立病院等10病院において急性期入院医療包括支払い制度が導入された。この試行において、同じ疾患であっても患者によって入院期間のばらつきが大きかったものの、1入院当たりの包括評価制度と比較して1日当たりの包括評価制度の方が、包括範囲点数と実際に治療にかかった点数との差が小さかったことや1日単価を下げるインセンティブが存在すること等が分かり、在院日数に応じた1日当たり定額報酬を算定する現行のDPCが導入された。


<コラム>包括払いでコストは下がったか?

日本型の包括払いであるDPC導入は、その導入の際には、コスト抑制効果も期待されていた。ではそれは達成されているのだろうか?実は、DPCによりむしろ医療支出が増えた可能性もある。DPC導入により平均在院日数は短縮されたが、1日あたりの入院料は上昇、病院にとっては入院患者数を増やすことで増収を図るような動きも観察されている。また、「DPCコンサルティング」といったサービスも登場しており、いわゆるアップコーディング(より報酬が高い 分類でコーディングして請求を行う)が行われている可能性もある。

DPCについて>

DPCの主な目的は、医療の標準化・透明化の促進である。客観的な診療情報データベースの構築により、医療の成果や改善点が明確になり、医療の質の病院間格差が是正され、全体的な質が向上する狙いがある。同時に患者にとっては、客観的なデータで標準的な治療や価格情報を参照できるという利点がある。また、平均在院期間の短縮も期待される。2016年4月1日見込みで、1,667病院・約49万床、国内の一般病床の約55%がDPCの運用対象である[7]。これはアメリカで導入されているDRG(Diagnosis Related Groups)/PPS(Prospective Payment System)制度と同様に定額払い方式であり、主に疾患コードと処置に基づいて構成されているDPCコードを採用している(2016年4月の時点で全4,244分類) [8]。DPC制度の特徴としては、1日当たりの包括評価であることや、出来高払い方式を一部組み込んでいることがあげられる。診療報酬の算出は、DPC施行診断群に該当する入院治療に対しては定額、非該当の場合には出来高払い方式で行われる。


DPCにおける具体的な報酬算定方法>

入院基本料、検査(画像診断を含む)、注射、投薬及び診療報酬1,000点未満の処置等を包括評価部分の対象とし、DPC分類別の1日当たりの点数、在院日数及び予め定められた医療機関別の係数に基づいて算出する。

手術、放射線治療、麻酔及び1,000点以上の処置は包括評価の対象外であり、診療報酬は出来高払い方式で算定される。

現在、同レベルの診療機能を持つ医療施設間の係数のバラつきをなくすため、全国規模で医療機関別係数の見直しが行われている。医療機関別係数には、基礎係数、機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ、暫定調整係数がある。医療機関別係数については、従来は調整係数と機能評価係数Ⅰ・Ⅱの3種類の係数の合計であったが、2012年度改定より基礎係数を導入し、調整係数を段階的に基礎係数と機能評価係数Ⅱに置き換えることとなった。2018年度改定で調整係数は廃止される[9]。

 

基礎係数:機能評価係数では評価できない医療機関の基本的な機能を評価した係数

機能評価係数I:病院の人員配置や施設全体として有する体制など、ストラクチャー(構造的因子) を評価した係数

機能評価係数:DPC/PDPS参加による医療提供体制全体としての効率改善等へのインセンティブ(医療機関が担うべき役割や機能に対するインセンティブ)を評価した係数

 

入院段階により算出方法が異なり、3つの入院期間が設定されている。入院期間Iにおける1日当たりの定額報酬は入院期間II及びIIIよりも高く設定されている。入院期間IIとは、入院期間IIにおける第1日以降平均在院日数までを指し、この期間における定額報酬は診断群分類に応じて異なるものの、1日当たりの医療資源の平均投入量を加味した上で入院期間Iよりも低く設定されている。入院期間IIIは特定入院期間として計算される最後の期間であり、1日当たりの定額報酬は入院期間IIより低く設定されている[10]。例外的に入院期間IIIよりも入院が長期化する患者の診療報酬については、出来高払い方式で算出される。

DPC制度が本来の目的に沿う成果を出しているかという点に関しては、様々な角度から議論が行われている。DPC制度はアメリカのPPS制度と出来高払い方式を独自の方法で組み合わせたものであるために、いまだに医療コスト削減には繋がっていないとする分析も多い一方、PPS制度を今後さらに統合していくことに対しては否定的な見方も多いとされている。



診療報酬改定のプロセス(中医協、社会保障審議会、改定率の決定までの流れ)

診療報酬については現在2年に1度見直しが行われており、見直しにあたっては様々な場で議論が交わされている。診療報酬改定については、図7-2-1にあるように社会保障審議会、内閣、厚生労働大臣、中医協が議論や方向性の決定等を行っている。例えば中医協では、診療報酬、保険医療機関及び保険医療養担当規則並びに訪問看護療養費に関する事項等について厚生労働大臣の諮問に応じて審議、 答申するほか、自ら建議することができる。中医協は、保険者、被保険者、事業主を代表する委員(支払側)と医師、歯科医師、薬剤師を代表する委員 (診療側)、公益を代表する委員によって構成されている。

参考文献

[6] 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/20170925.pdf(アクセス日2018年1月25日)

[7] 厚生労働省「平成28年度診療報酬改定の概要(DPC制度関連部分)」http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000115023.pdf(アクセス日2017年10月27日)

[8] 厚生労働省「平成28年度診療報酬改定の概要(DPC制度関連部分)」http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000115023.pdf(アクセス日2017年10月27日)

[9] 厚生労働省「DPC 制度に係る医療機関別係数の今後の検討の考え方(案)」http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000151103.pdf(アクセス日2018年2月2日)

[10] 厚生労働省「平成30年度診療報酬改定に向けたDPC制度(DPC/PDPS)の対応について(案)」 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000186975.pdf(アクセス日2018年2月2日)