【2018年版】4.4地域における医療提供体制の整備等

医療提供体制が抱える課題に対して、都道府県などでもそれらの課題を解決するべく様々な取組みが行われている。効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムの構築を通して、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進する医療介護総合確保推進法の施行により、医療計画内への地域医療構想の策定や地域包括ケアシステムの構築など大きな動きがあった。具体的な取組みについては以下の通りである[10]。


医療計画

医療計画は、地域における医療提供体制の整備を促進するために、医療資源の効率的活用等を目的に、1985年の医療法改正において創設されたものである。現在、医療計画は都道府県が地域の実情を踏まえ、医療提供体制を確保するために策定している。地域における病床数を管理し、質の高い医療が提供されるよう体制の整備を行っている。

医療計画の記載事項については、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)・5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む))、在宅医療に係る達成すべき目標、医療連携体制、人材確保、住民への情報提供推進策、医療の安全性の確保、2次、3次医療圏の設定、基準病床数の算定-等がある。

医療計画の記載事項の見直し等は医療法改正により行われており、ここ最近の見直しとしては、2014年の第6次医療法改正で、「効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムの構築」により、医療・介護の総合的確保を推進するため、病床機能報告制度の創設、地域医療構想の策定、地域医療介護総合確保基金の創設、地域医療構想調整会議の設置-等があげられる[11]。


地域医療構想

2025年までに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療・介護費用が急増すると推測されている。さらに、高齢者人口の増加率は地域によって差があり、それぞれの地域で必要とされる医療機能に見合った資源を効果的かつ効率的に配分するために、急性期から回復期、慢性期と患者の状態にあわせたより良質な医療サービスが提供される体制の整備が必要であるという認識のもと、都道府県は医療計画の中で「地域医療構想」を定めることになった。

医療介護総合確保推進法による改正後の医療法では、医療計画において地域における病床の機能の分化及び連携を推進するための基準として、厚生労働省令で定める基準に従い定める区域(構想区域)における、次に掲げる事項を含む将来の医療提供体制に関する構想(地域医療構想)を定めることが規定された。都道府県は、地域の医療需要の将来推計や報告された情報等を活用して、構想区域ごとの各医療機能

の将来必要量を含めた地域医療構想を策定し、医療計画に新たに盛り込み、医療機関のさらなる機能分化を推進することとされた。

地域医療構想の内容については、2025年の医療需要(入院、外来別・疾患別患者数等)、2025年に目指すべき医療提供体制(2次医療圏ごとの医療機能別の必要量等)、目指すべき医療提供体制を実現するための施策等が盛り込まれている。


その他の主要な政策

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)[12]

高齢化の進展により、認知症対策も1つの大きな課題となっている。2025年には認知症の患者は約700万人前後になり、65歳以上高齢者に対する割合は、現状の約7人に1人から約5人に1人に上昇する見込みが明らかとなった。このような社会において、認知症の人を単に支えられる側と考えるのではなく、認知症の人に寄り添いながら、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるよう、環境整備を行っていくことが求められている。そこで、認知症の人やその家族など様々な関係者から幅広く意見を聴取し、厚生労働省が関係府省庁と共同して新オレンジプランを策定した。

 

新オレンジプランの概要は以下の通りである。

・認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進(啓発キャンペーン、認知症サポーター養成等)

・認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供(本人主体の医療・介護等の徹底、発症予防の推進、早期診断・早期対応のための体制整備等)

・若年性認知症施策の強化(普及啓発等)

・認知症の人の介護者への支援(認知症初期集中支援チーム等による早期診断・早期対応等)

・認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進(生活の支援(ソフト面)、生活しやすい環境(ハード面)の整備等)

・認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーション、介護モデルなどの研究開発及びその成果の普及の推進(認知症の病態等の解明等)

・認知症の人やその家族の視点の重視(初期段階の認知症の人のニーズ把握や生きがい支援等)

など


がん対策[13]

日本において、がんは1981年から死因の第1位であり、2015年には年間約37万人が亡くなっていることから、国民の健康にとって重要な問題となっている。こうした状況も鑑み、2006年6月にはがん対策の一層の充実を図ることを目的にがん対策基本法が成立し、2007年4月に施行された。また同年6月には、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、第1期のがん対策推進基本計画が策定された。

第1期(2007~2011年度)の基本計画では、「がん診療連携拠点病院」の整備、緩和ケア提供体制の強化及び地域がん登録の充実が図られた。第2期(2012~2016年度)の基本計画では、小児がん、がん教育及びがん患者の就労等の問題に取り組むこととなった。さらに、2015年12月には、「がん対策加速化プラン」が策定された。

 

このようにがん対策として様々な取組みが行われたが、2007年度からの10年間の目標であった「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」については、達成することができなかった。今後は、こうした状況も踏まえ、予防のための対策をさらに充実させていくことが必要である。がんにかかった場合は、早期発見・早期治療につなげられるように検診の受診率を向上させることも重要である。

第3期がん対策推進基本計画(2017~2022年度)は、全体目標を「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」とし、分野別の施策は以下の通りである。

1.がん予防

(1)がんの1次予防、(2)がんの早期発見、がん検診(2次予防)

 

2.がん医療の充実

(1)がんゲノム医療、(2)がんの手術療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法、(3)チーム医療、(4)がんのリハビリテーション、(5)支持療法、(6)希少がん、難治性がん(それぞれのがんの特性に応じた対策)、(7)小児がん、AYA(Adolescent and Young Adult:思春期と若年成人)世代のがん、高齢者のがん、(8)病理診断、(9)がん登録、(10)医薬品・医療機器の早期開発・承認等に向けた取組み

 

3.がんと共生

(1)がんと診断された時からの緩和ケア、(2)相談支援、情報提供、(3)社会連携に基づくがん対策・がん患者支援、(4)がん患者等の就労を含めた社会的な問題、(5)ライフステージに応じたがん対策

 

上記1~3を支える基盤として、がん研究や人材育成、がん教育、普及啓発の体制の整備が掲げられている。

また、がん対策を総合的かつ計画的に推進するための必要事項としては、関係者等の連携協力の更なる強化、都道府県による計画の策定、がん患者を含めた国民の努力、患者団体等との協力、必要な財政措置の実施と予算の効率化・重点化、目標達成状況の把握、基本計画の見直し−が項目としてあげられている。

参考文献

[10] 厚生労働省「医療介護総合確保推進法(医療部分)の概要について」http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000038005_1_2.pdf(アクセス2018年2月2日)

[11] 厚生労働省「地域包括ケアシステム」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/(アクセス日2017年10月20日)

[12] 厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000064084.html (アクセス日2018年3月2日)

[13] 厚生労働省「がん対策推進基本計画」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html(アクセス日2018年3月2日)