ワシントンDCから国際保健に関する情報や動向をお届けします。米国は民主党・共和党政権を問わずこれまで国際保健への取り組みを重視してきました。超党派議員による支持とNGOや政府機関、医療・研究機関などのすそ野の広い連携がエボラへの取り組みを後押ししたり、ホワイトハウス直轄のプログラムなど大統領の指導力が発揮されています。CSISグローバルヘルスポリシーセンターでのイベントやレポートの中から関心の高い分野をご紹介します。本コンテンツはCSIS Global Health Policy Centerの了解を得ております。Center for Strategic International Studies (CSIS) Global Health Policy Center Adjunctフェローでもある村上博美が担当いたします。
ワシントンDCからーGlobal Health Discussion Update
HGPI x CSIS Global Health Policy Center
日本医療政策機構は米国の戦略国際問題研究所(CSIS)Global Health Policy Centerと連携して国際保健分野の幅広い知識の提供を推進しております。日本では、人口の高齢化や低出生率に伴う医療への影響や、社会保険制度改革など国内独特の課題に目が向きがちですが、国際保健分野は国を超えて多国間で課題解決ができる貴重な分野です。特に日本は戦後、急激に乳幼児死亡率の低下や、母子保健への積極的な取り組みに加え皆保険制度を実現し、途上国が現在直面する多くの課題にその経験知を活かし多大な貢献ができる国です。日本はこれまで国際保健分野ではリーダーシップを発揮してきた実績もあり、日本が貢献できる役割はますます重要となっています。国際的な取り組みのトレンドや、各国のイニシアティブなど国際保健分野の動向を知ることは大変重要となっています。
戦略国際問題研究所(CSIS)は政府、国際機関、民間部門、市民社会の政策決定者に対し、戦略的見識と超党派的政策の解決策を提供するワシントンD.C.有数のシンクタンクである。CSIS Global Health Policy Centerは、米国の国際保健政策を戦略的・統合的にし、かつ持続可能なものにすることを目的としており、多様なステークホルダーと結集し、政策立案者と直接協力し、開発途上国の専門家と提携しながら、HIV /エイズ対策特別委員会や欧州委員会のような効果的なトップレベルの作業部会を招集するなど重要な役割を果たしている。
政策議論:パンデミックへの備え
コンゴ共和国でのエボラ感染が判明してから、周辺地域や国際社会の迅速な対応がとられている。2014年のエボラ感染拡大という痛い教訓をもとに我々はパンデミックに対して準備態勢が整っていると言えるのか。米国のNSCにて医療・バイオ防衛即応準備政策担当のルチアナ・ボリオ氏をはじめ、USAIDやDakar、チャタムハウスの専門家とのパネルディスカッションでは、2014年の教訓を踏まえ我々が直面する課題とその取り組みについて議論された。
ワクチンの重要性:超党派協力体制
2018年2月に出版されたHealth Affairs において、2016年から2030年の間に公的機関によるワクチン接種は3600万人の命を救い、健康を害し貧困に陥る2400万人を救済するという研究が発表された。ワクチンへの$1の投資は、医療コストの$16に相当するというデータがでている。ワクチンの重要性と超党派による協力体制の強化についてのレポート。
妊婦・新生児死亡率削減官民協力報告
Saving Mothers, Giving Life (SMGL) initiativeの過去5年の取り組みを振り返る。SMGLプログラムは、ザンビア、ウガンダ、ナイジェリアにおいて実施されている妊婦及び新生児死亡率を劇的に下げる官民協力イニシアティブである。米国内の医療に関わる政府機関や省庁、そして民間のパートナーが協力して共通の目的を達成するために活動している。6月21日予定。
国際保健:新たな戦争
現在、国際社会は未曽有の危機に直面している。シリア、イエメンをはじめ多くの紛争地域では医療施設や医療従事者がターゲットとして狙われ、壊滅的なダメージを受けている。人道支援を行う人員は保護されるというジュネーブ条約が機能していない。国という単位を超えて新たな秩序を確立する努力が国際社会に今こそ求められている。
IPライセンスと技術革新
寿命がこの一世紀で2倍になった一方、貧富の差による健康格差はまだ存在する。我々が直面している課題とは、医療分野の発展が進んでいるのに、そういった医療にアクセスできない地域がまだ世界に多くあるということである。特許と技術革新へのアクセスする権利をめぐる米国政府、研究機関、民間企業からの参加者による議論。
国際社会のHIV/AIDSの取り組み
デューク大学のメルソン教授とマウント・セント・メアリー大学のインリグ教授が出版した著作「The AIDS Pandemic: Searching for a Global Response」から、これまで36年にわたるHIV/AIDSに関する国際社会の取り組みを振り返った。
国際保健:民間の役割とは
民間企業やNGOなどが国際保健分野での進展を促すためにどういう役割を担えるか議論が行われました。
国際保健:トランプ政権の予算と議会
トランプ政権が打ち出した国際機関への拠出の大幅削減や、議会がそれに対応する様子など、米国内での国際保健に関する新政策や動きや、起こり得るシナリオについて議論。
鎮痛剤オピノイドをめぐる米国の戦い
米国で最近最も注目を浴びている深刻な医療問題は、薬物の過剰摂取やそれに関連した自殺であり、米国の白人中年の死亡率上昇の一つの要因となっている。経済的困窮で雇用が安定しないことや、鎮痛剤オピノイド(医療用麻薬)が安易に処方された結果、社会に広く蔓延し大きな問題となっている。それについての米国の取り組みについて議論。
Her Health, Her Lifetime, Our World
CSISが主導した「若年女性の健康」に関するタスクフォースは、過去数か月に及ぶ議論を2017年3月にまとめ発表。新政権は途上国支援を担う国際機関への財政拠出を削減する方針を示したが、本提言では、13の低所得国の若年女性や母子の健康を守るため米国が重点的に取り組む具体的アジェンダを示し、地域経済の担い手やコミュニティリーダーとなる女性人材の育成が投資として重要な意味を持つこと、また地域社会の安定と安全は米国にとっても大きな利益となると主張している。
ナイジェリア・米国医療連携
米国およびナイジェリアの政策立案関係者による健康問題への解決策の議論を実施。ナイジェリアはアフリカで最も人口の多い国であり、政策アイデアやプログラムのイノベーションなど、医療の質とアクセスを改善するための議論と平行して、ナイジェリアとの持続的な医療関係の連携の重要性を強調した。CSISは以下の2つの新しい報告書を発表する予定。「ナイジェリアの保健システムにおける説明責任の推進」と「ナイジェリア感染症への取り組み・結核の潮流とマラリア駆除促進への取組み」。
前公衆衛生局長官 Dr. Vivek Murthy
日本ではあまり知られていない米国政府公衆衛生局長官は軍医総監でもあり、米国の公衆衛生政策のトップ。2014年に37歳の若さでオバマ大統領により政治任命されたマーシー前長官はインド系移民の出身。医師でありながら非営利団体運営や起業するなど、珍しい経歴を持っている。ハーバード大学在学中にHIV/AIDS教育やインド女性の健康などに関わる団体を立ち上げ、内科医として従事した。気さくで誠実な人柄に支持者も多い。政府の公衆衛生のトップに登用される米国の人材の多様性を示す。
Post-disaster Mental Health in Japan
東日本大震災から4年、HGPIがまとめた「災害後のメンタルヘルスに関する教訓と課題」についてのコメンタリーをCSISにて発表。日本が抱える社会的・構造的問題などまだまだ対応すべきことについてまとめている。
Empowering J Women through Health
安倍政権は女性の活躍を推進する政策を打ち出しているが、日本の女性の社会進出を支える健康面での環境整備が実は途上国などと比較しても遅れている部分がある。日本政府が取り組むべき女性の健康支援の必要性について提言。
日米対話:国際保健の連携強化
2017年5月3日にCSISとJCIEが「国際保健における日米連携」会議主催。塩崎康生労働大臣や武見敬三参議院議員、日米の国際保健専門家40人ほどが集合し、新トランプ政権で国際保健分野での日米の協力可能な分野として、ヘルスセキュリティ、感染症、国際機関のガバナンス、イノベーションなどについて議論した。
最終更新日:2019年1月