個別政策テーマ

認知症

日本における認知症施策

平均寿命の進展に伴い、加齢によって起こり得る課題と向き合うことが求められるようになった。その代表的なものの1つが認知症であり、その数は2015年時点で世界に4,680万人と推計され、2030年には7,470万人にまで増加すると言われている。さらに高齢者に限らず、若年層の認知症も課題とされている。
一方、認知症のアルツハイマー病をはじめとする原因疾患の根本治療薬は発見されていない。新薬の開発だけでなく、認知症と上手く向き合いながら暮らせる社会の構築も必要とされており、認知症対策はグローバルレベルで喫緊の課題となっている。…

日本におけるグローバルヘルス

グローバルヘルスに関する日本の貢献

日本の開発協力の歴史は、コロンボ・プランと呼ばれる国際機関へ加盟した1954年に遡る。加盟をきっかけに、日本はアジアの近隣諸国と密接な協力体制を築いていくため、その後の数年間で戦後賠償や円借款を通した経済協力協定を次々と結んだ1。さらには国内の経済成長の後押しもあり、1960年代の終わりまでに日本は国際援助の取り組みにおいて中心的な役割を担う国となった。1969年にOECDにより政府開発援助(ODA)の概念が取り入れられて以降、日本はODAを積極的に行い2、自国の経済発展の歩みを開発援助に活かす拠出大国として評価されるようになった。これらの日本の開発支援の多くは投資や貿易活動を伴うものである3。…

女性の健康

現在、政府は女性の活躍推進を成長戦略のひとつとして掲げており、産業界も女性役員・管理職への登用に関する行動計画を策定し、数値目標を設定するなどの動きを活発化させています。このように社会全体で働く女性の活躍を推進する機運が高まっている一方、女性が働き続けるための健康面への社会の支援や、女性自身の健康知識は十分とは言えません。女性が、妊娠や出産・子育て、就労の継続等、ライフプランを主体的に選択するだけでなく、社会への貢献を実現するためにも、健康は重要な要素のひとつです。女性の健康増進施策を促進するための調査研究や、マルチステークホルダーによる議論の場が必要とされています…

ワクチン

当該分野の背景・課題

世界保健機関(WHO: World Health Organization)は、健康、社会、経済、教育への影響を考慮した際に、ワクチン接種が最も費用対効果の高い公衆衛生学的な介入であると述べている。一方で、世界的にはワクチン接種をしないもしくはできないことにより「ワクチンで予防可能な疾患(VPD: Vaccine Preventable Disease)」に毎年150万人が罹患している。日本では、ワクチン接種に関連する健康被害に対して社会が過敏に反応し、メディア報道や訴訟などにより予防接種政策を再考しなければならない事例が生じている。また、子どもを持つ親が親自身や子どもへのワクチン接種を躊躇したり拒否したりするワクチン忌避(Vaccine Hesitancy)と呼ばれる現象も見られている。そのため、定期予防接種をスケジュール通りに国民に提供できない事態が生じている。また、制度の変更などの影響もありVPDが日本でもいまだに報告されている。…

非感染性疾患(NCDs)

当該分野の背景・課題

国内の状況
わが国の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳と世界トップレベルである[1]。一方、日本の疾病構造を死因からみると、戦中・戦後は感染性疾患が中心であったのに対し、現在はがんや心臓・脳血管疾患などの非感染性疾患(NCDs: Non-Communicable Diseases)中心へと大きく変化してきている。NCDsとは、世界保健機関(WHO: World Health Organization)の定義で、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒、大気汚染などにより引き起こされる、がん・糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・メンタルヘルスをはじめとする慢性疾患をまとめて総称したものである。日本においても、総死亡数のうち約82%はNCDsによるものであり、喫緊の課題となっている[2]。また、特定の疾病や傷害による健康の損失(疾病負荷)を示す指標である障害調整生存年数(DALY)[3]に焦点を当てると、疾病負荷が特に高いのは心血管疾患、がん、筋骨格系障害、精神疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、神経障害、消化器疾患である[4]。…

Innovation & Sustainability

国内外の課題

国内、海外の状況
医療システムは国民の生活を安定させる社会基盤の1つである。日本が1961年に国民皆保険制度を確立しユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成して以来、日本の医療システムは、世界トップクラスの健康長寿社会を支えてきた。しかし、相対的に医療消費額が大きい高齢者人口の増加、少子化に伴う現役世代人口の減少、有事が引き起こし得る医療システムへの負荷等の諸課題が、現在の医療システムの持続可能性を脅かしている。

イノベーションの推進、公平なアクセスの確保、及び質の高い医療の提供を、コストを抑えつつ実現するという課題は、世界共通の課題である。…

薬剤耐性(AMR)

国内外における課題

毎年、世界中で少なくとも約70万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられている。この問題に対して有効な対策が講じられなければ、2050年には年間死亡者数は1,000万人にまで上昇するとの予測もある。国内では、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、薬剤耐性菌の中でも頻度が高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)が原因となる菌血症による2017年の死亡者数を約8,000人と推定している。

抗菌薬は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、患者の予後の改善に大きく寄与してきた。一方で、AMRは国内の医療システムの将来を脅かす深刻な問題として顕在化しており、この増大する脅威に対処するための強固な政策が必要となっている。…

メンタルヘルス

メンタルヘルスに関わる課題は、国や地域を問わず現代社会に大きな影響を与えている。日本において精神疾患を有する患者数は2017年で約419.3万人と増加傾向にあり、この患者数は、いわゆる4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い状況である。特に外来患者数は年々増加傾向にあり、2017年には約389.1万人に上っている。入院患者数においても約30.2万人と減少傾向にはあるが、日本は人口当たり世界最大の精神科病床数を有し、2018年の病院報告によれば、最新の精神病床平均在院日数は265.8日にのぼり、一般病床の16.1日と比較すると長く、地域格差も大きい。またメンタルヘルス不調・精神疾患の原因は多岐にわたる。これまでにも阪神淡路大震災や東日本大震災のような災害や経済状況の悪化に伴う雇用不安、家庭環境など、社会・経済的要因も大きいとも言われており、ヘルスケア領域に留まらず、社会課題として取り組むことが求められている。…

こどもの健康

当該分野の背景・課題

国内、海外の状況(罹患者数などファクトや推計)
こどもの健康を守り、改善することの重要性はいうまでもありません。過去数十年の間にこどもの健康状態は向上し、幼いこどもの死亡率は低下しました[1]。しかしながら、こどもの健康状態のさらなる改善には多くの課題が残されています。こどもの死亡の半数以上は、医療のアクセスや生活の質が保証されれば治療や予防が容易にできるものを原因としていることが分かっています。

こどもの生存率には世界で大きな格差があり、中低所得国ほどその影響を強く受けています。アフリカのサハラ砂漠以南の地域はこどもの死亡率が世界で最も高く、高所得国の15倍に上るところもあります。こどもの死の多くは、予防接種、適切なホームケア、医療サービスへのアクセス、母乳育児率の向上、栄養状態の改善によって予防可能です。しかし、救命を目的とした介入の多くは世界の最貧層の人々には届かないのです。…