新潟県柏崎保健所の事例

取り組みの背景

  • 少なくとも15年以上は継続して実施。平成25年度から、現在の課題に基づいて今後の方針を検討すべく、妊娠期からの相談・連携体制整備事業の予算を活用し、妊娠期からの相談・連携体制整備に係る地域情報交換会(以降、情報交換会)を開催した。メンバーは、産婦人科医療機関の医師、助産師会の助産師、養護教諭、市の子育て支援センターの保健師および助産師、市村の教育委員会担当、村の母子保健担当、保健所の保健師ら。思春期世代への継続的な予防教育、妊娠発覚後の支援体制の構築、人工妊娠中絶者への支援体制の構築といった課題を整理し、議論した。その結果、思春期世代への継続的な予防教育において、学校での支援体制の強化と予防教育の強化の必要性を情報交換会のメンバーが認識し、思春期性教育講演会に取り組んでいる。

取り組み内容

■思春期性教育講演会

対象者
  • 柏崎保健所管轄内にある高等学校、特別支援学校高等部の全8校。1年生を対象とする学校が多い
  • 管内全13校の中学校も対象。柏崎市内においては、平成27年度は一部のみだったが、平成28年度からは全校を対象とし希望に応じて実施。平成29年度は10校で実施
  • 小学校は、学校が独自に実施
講師
  • 情報交換会メンバーの産婦人科医や助産師、保健所の保健師
予算措置
  • 高等学校は県、中学校は市村の教育委員会、小学校は学校独自の予算を活用
実施頻度
  • 年に1回
内容
  • 各学校の考えや対象学年によって異なるが、エイズ・性感染症の予防、性のイメージ、妊娠の仕組みや避妊、月経に伴う症状(月経前症候群や月経随伴症状)や月経の対処方法、悩みの相談先等が主な内容
  • 平成29年度は、情報交換会における意見を踏まえ、実施前後でアンケートを実施した。内容は性のイメージ、知識に加え、性感染症及び望まない妊娠を防ぐための行動がとれるか、相談行動がとれるか。結果は現在保健所にて分析中だが、授業実施により性のイメージや知識の向上が見られた
実施にあたっての講師の工夫や配慮
  • 地域の関連データや体験談、テーマ毎の相談窓口等具体的な情報を提示する
  • 男性視点の性教育の必要性が課題として挙がったため、男子生徒の多い高校に対しては、男性の産婦人科医を派遣した

強み

  • 多職種連携
    • 情報交換会によって、講師、保健所、学校が課題を共有できるため、事業継続に対して共通認識を持つことができる。

課題

  • 事業の評価方法
    • 中長期的な効果を測る指標。(保健所担当者)
  • 授業実施方法、対象者の選定
    • 事前事後アンケートで把握した生徒の実態に沿った効果的な指導。(保健所担当者)
    • 特別支援学校の生徒に対する授業の方法や保護者向の巻きこみかた。(講師)

今後の展開の方向性

  • 事業の継続
    • 外部講師を継続して派遣するための仕組みづくり。(保健所担当者)
  • 個別指導の機会
    • 生き方や性のあり方が多様化している現状に合わせ、個人の個別課題に対応できるような指導方法の検討。(講師)

他のステークホルダーへの期待

    • 性教育に対する予算措置を行い、積極的な取組の継続を支援してほしい。(保健所担当者・講師)
  • 外部講師
    • 生徒のニーズや地域課題等の実態に合った内容の指導を継続してほしい。(保健所担当者)

インタビュー協力

【保健所担当者】

  • 新潟県柏崎地域振興局 健康福祉部 地域保健課

【講師(思春期性教育講演会講師)】

  • ゆいく助産院 助産師 石黒直美氏

インタビュー実施:2017年11月

新潟県のその他の取り組み


地域密着型の各保健所の主体的な取り組みにより、地域の特性や課題にあった性教育を提供


保健所と市の保健部門が連携し、高等学校での性教育授業に医療専門職の講師を派遣


独自に作成した教材と学校のニーズの組み合わせによる中学校の性教育授業への専門家派遣