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現状の医療問題から考えるオンライン診療への課題と期待
渡邊 亮
ー日本の医療に関する問題意識や課題についてお聞かせください。
前村 聡
保健医療に関する最大の課題は、膨張する医療費だと考えています。2001年ごろは30兆円だったのが、その後10年で40兆円を超えて、2025年には60兆円に到達することが予想されています。2016年の12月から日経新聞の1面で連載を始めた企画「砂上の安心網」では負担と給付をどう考えるのかを軸に置きました。取材班としては、将来世代への借金で支えられている日本の国民皆保険制度はすでに破綻しているという前提に立ち、今どうすべきなのかを考えていくのが重要な課題であると考えました。負担と給付に関して一人ひとりの国民が現状を認識していない中、「日本全体の医療費がどれくらいかかっていて、それに対して国家予算はどのくらいなのか」ということを把握して、国民皆保険というすばらしい制度を子どもや孫の世代まできちんと継承していく方策を探りました。
渡邊 亮
ーご指摘のように、財政的な課題によって保健医療の仕組みが維持できるのかという問題について、多くの医療関係者が気づいていても、なかなか具体的な対策に踏み込むことができていないのが現状だと思います。
この課題に対して、オンライン診療は何らかの役割を果たすことができるのでしょうか。
前村 聡
国民皆保険制度の維持という点では、オンライン診療がどういう方向に進むのかは、非常に大きなインパクトがあると思っています。後期高齢者75歳以上の1人あたりの医療費が増加していることが知られていますが、砂上の安心網の連載企画では、後期高齢者医療制度が導入された2008年度以降の全国1741市区町村におけるデータを集めて比較しました。1回目の「チェックなき膨張」という見出しの記事中では、16年度で1人当たり医療費がもっとも高い自治体は福岡県宇美町で年133万円、一方もっとも低い自治体は東京都御蔵島村で年47万円で、1人当たり医療費の格差は3倍近くに達していることを示しました。
渡邊 亮
ー非常に大きな差ですね。
前村 聡
はい。このように医療費が増大していく中、高齢者への対応が全く手つかずの状態になっています。もともと後期高齢者医療制度は、増大していく後期高齢者の医療費をどのようにコントロールしていくのかという視点で、かかりつけ医がゲートキーパーとなって適正な診療を行うという前提で議論が進められていました。しかし、フリーアクセスの制限に対する反対意見もあって、制度の導入時点で、かかりつけ医制度は事実上骨抜きとなり、高齢者にかかる医療費は膨張していきました。
医療費の格差は同じ都道府県内でも差があって、県内の市区町村間で格差が2倍を超えているところは福島県で2.35倍、東京都も2.12倍、北海道も2.09倍でした。特に福岡県は全ての市町村で、全国の平均医療費を上回っている状況です。経年で比較していくと、医療費全体として基本的に少しずつ上がっているのだけど、都道府県格差は変わっておらず、医療費のコントロールが効いてないといえるでしょう。
渡邊 亮
―その要因は何だとお考えですか?
前村 聡
一つは一人当たりの受診回数でしょう。OECDのデータでも、日本の一人あたり受診回数は12.8回と韓国についで2番目に多いことが報告されています。これに対して、日本医師会は日医総研のワーキングペーパーで「日本の受診回数の多さは問題として取り上げられるが、受診1回あたりの単価は低く、外来医療は高くない」と指摘しており、日本の外来医療はいつでも受診できるうえ、むしろ効率的に提供されている可能性があるとしています。つまり、気軽に医療にアクセスできているから重症化を防いでおり、医療費抑制につながっているという主張です。しかし、実際に厚生労働省のデータを見ると、一人当たりの医療費は高額になっています。こういった実態を見ていくと、必ずしも必要ではないような医療まで提供されている現状があるのではないかと思います。
渡邊 亮
ー具体的にはどの様な事例があるのでしょうか?
前村 聡
「砂上の安心網」の1回目で取り上げたのですが、例えば沖縄県に住む75歳の方のケースでは、医療費が3年半で7,400万円使われていました。この方は、もともと心臓弁膜症で入院していたのですが、その後ずっと急性期の病棟に入院していたそうです。沖縄県と広島大学の教授がレセプトを共同で分析したところ、レセプトに紐付いている病名は76もあり、併せて大量の薬が投与されていました。実際に後輩の記者が取材して確認したところ、最終的に透析の導入についても検討されたそうですが、「透析を行うと1年間に追加で500万円かかる」ため、ご家族が「今までに十分治療していただいたから」と透析治療を断念されたそうです。その後、その方はお亡くなりになったそうですが、このような状態が放置されてしまっているところが問題だと思います。
確かに外来1回あたりの単価は低くても、回数の多さや、薬が2重3重に処方されているケースもあります。このような過剰とも言える診療について、今はそれほど認識されていないかもしれないけれども、このようにまったくコントロールがされていない現状は、大きな課題であるとの指摘もあります。
渡邊 亮
ーご指摘のような課題に対して、オンライン診療が果たせる役割はどのようにお考えでしょうか?
前村 聡
このような状況でオンライン診療を導入すると、おそらく受診回数は増えると思います。フリーアクセスの延長で、もう少し受診しやすくなる。そこをどのように活用していくのかは、患者の視点からも、また国民の医療費といったマクロの視点からも大きいなテーマだと思います。
その一つのポイントとして、老衰死をいかに増やしていくのかが重要だと私たちは考えています。厚生労働省が公開している全国1,741の市区町村のデータの中から人口20万人以上の地区を抽出し、標準化死亡比(SMR: Standardized Mortality Ratio)データを分析したところ、老衰死のSMRが高ければ高いほど後期高齢者の1人あたりの医療費は低いという傾向がみられました。介護費が低下する傾向はなかったのですが、増加するという傾向もなく、適切に介護を提供すれば、介護費も医療費も低くできるということがわかり、さらに大往生といわれる「老衰死」を迎えることができるのではないかと予想されます。この分析に基づくと、茅ヶ崎市が男性で老衰死がトップで、かつ医療費が安い。実際に茅ヶ崎を取材すると、南の方は平たんな土地が多く、高齢者が自転車で活発に移動していることと、実際に地域の取り組みとして在宅療養支援診療所と看護師、介護士などの職種連携が早い段階から進んでいるということがわかりました。ちなみに、茅ヶ崎市は人口当たりの在宅療養支援診療所数が全国でトップクラスに入っていました。また市ではNTTデータに委託して国保のレセプトを分析していました。財源には限りがあって全ての疾患の対策ができるわけはないのですが、例えば糖尿病の重症化患者をどのように防げるかという分析をして効果的な対策に役立てようと考えていました。
渡邊 亮
ーなるほど。老衰死を増やすことが、患者の視点に加えて国民医療費の抑制の観点からも重要だということですね。オンライン診療が老衰死の増加にどのような可能性があるのでしょうか?
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前村 聡
茅ケ崎市の例でみると、かかりつけ医の役割を果たす在宅療養支援診療所において患者さんとの連携を強化する上で、とても重要だと思います。つまり、定期的に患者さんの診療するツールとして、オンライン診療は非常に効果的だと考えています。
老衰死が増加した理由を茅ヶ崎市の医師会に聞いてみると、何らかの症状があったとしても、高齢者が直ちに入院するのではなく、在宅医が診療をしているケースが多いようでした。通常、病院で亡くなれば病死という診断になりますが、かかりつけ医とご家族やご本人との良好な関係に基づいた在宅診療の場面では過剰な医療を提供せず、最後は老衰死を迎えることができるケースも多いようです。在宅診療を加速させる上で、オンライン診療は有効なのではないかと思っています。
さらに、オンライン診療は糖尿病をはじめとした生活習慣病の重症化予防などの管理において果たす役割も大きいと思います。例えばクリニックでは、糖尿病の重症化を防ぐために患者さんに対して定期的に尿検査を行い、その検査結果に基づいて指導を行っていると思います。しかし、そのような指導はオンラインでもできる部分も大きいと思いますし、むしろ働き盛りの方の場合は自宅で受診ができ、結果として重症化を防げる人が増えるかもしれません。高脂血症、高血圧も同様であると考えます。このように、在宅医療の推進においてオンライン診療の果たす役割は大きいと考えます。
渡邊 亮
ー我々はオンライン診療の活用について福岡で実証されている武藤真祐先生にもお話を伺っているのですが、前村さんがおっしゃるとおり、患者さんを糖尿病のコントロールのために外来で診察できる時間は限られているけれど、オンライン診療は診察時間を代替するのにとどまらず、日常生活習慣を含めたモニタリングができる点で大きな価値があるのではないか、とご指摘になっていました。。
いままでのお話を踏まえると、老衰死の増加や生活習慣病の重症化予防という点で、オンライン診療は高齢者に適性が高いということになると思います。その他に、オンライン診療が効果的だと考えられるターゲットはありますか?
前村 聡
高齢者と生活習慣病の方に加えて、過疎地域に住んでいる方にとって有効だと思います。とりわけ医師不足の地域の方にとって、定期的に医療を受ける機会が確保されれば、慢性疾患の重症化を防ぐことができます。
弁護士が全くいないか、1人しかいない地域を「ゼロワン地域」というのですが、弁護士は2人以上いないと訴訟が成り立たないため、国は弁護士など法曹人口を増やそうと法科大学院を設置しました。結果として弁護士が増え、ゼロワン地域は一応解消したことになりましたが、弁護士へのアクセスが大きく変わったかというと、それほど大きな変化はなくて、弁護士が都市部に集中しただけでした。この点は医師でも同じ傾向があって、例えば高知県で医師はすごく増加したのですが、その大半が高知市内に集中しました。
ですから、医療過疎地域の問題に対応するには、医師数を増やすよりもオンライン診療の活用も大切だと思っています。法曹界でも、東京にいる弁護士がテレビ電話を通して地方の方の相談に乗り、実際の裁判では出張している場合もあります。医療ではまだ様々な制約がありますが、オンライン診療を活用することができるのではないかと思います。
佐藤 大介
ー既存の診療に追加してオンライン診療が加わることで治療密度が上がるから患者の満足度は上がっているという研究が多く存在しますが、当然それは医療費用を増大させます。一方、オンライン診療の有効性を老衰死をアウトカムとして捉えた場合、その価値は大きいのかもしれません。重症化する前にオンライン診療によって予防的な介入することで、結果的に医療費は下がり、患者家族のQOLが上がっていくという考え方に基づいた研究は、私が知る限り見たことがないので、とても面白い視点だと感じました。日本では、そのような考え方に基づいて、オンライン診療を評価することも、一つの方法だと思います。先行研究によると、オンライン診療は医療経済評価的には悪いという結果が出ています。なぜなら、病院が負担するシステムの費用や、オンライン診療を支えるスタッフの人件費とかが増えるためです。しかし、いまのお話のように、かかりつけ医による在宅診療のインフラとして位置づけるというアプローチだと、おそらく医療経済評価の観点からもよい結果になるかもしれないと思います。このような考え方は、社会的な視点に基づかないと出てこない話だと感じました。
前村 聡
オンライン診療の議論では、エンドポイントが何かということを踏まえることが重要だと思います。「この社会をどういう方向にもっていきたいのか」というところをエンドポイントとし、それに向けてオンライン診療がどのように役立つのかを考えることが必要ではないかと思います。
渡邊 亮
ーそのような社会の視点から見た場合に、オンライン診療が普及する上でどのような課題があるのか、という部分について考えをお聞かせください。
前村 聡
遠隔診療は、どのように運用していくかというルール作りがまだできていません。厚生労働省の指針で言葉の定義は明確化されましたが、人々が思い描く遠隔診療がバラバラで、そのルール作りが上手くいってないと思います。少なくとも指針の定義でいうオンライン診療は、いま一番必要だし、患者さんのためにも推進していくべきだと思いますが、ルールの作り方が非常に大事だと感じています。今回の診療報酬改定でオンライン診療の算定要件として、「緊急時に概ね30分以内に対面による診療が可能」という条件が入っていますが、ここはかなり重要なポイントではないかと思いました。
というのも、先ほど言った限界集落的なところでは、とても30分ではいけないところもあると思います。オンライン診療は、基本的に急な対応が必要ではない疾患を対象にしており、このルールを当てはめると、実態として交通のアクセスのいい都市部しかできない可能性があるのが大きな課題だと考えます。
渡邊 亮
ーありがとうございます。それでは、逆に市民の視点から見た場合に、オンライン診療の普及において、課題とか障壁になることはいかがでしょうか?
前村 聡
タブレットやスマホの普及によって10年前に比べると障壁は下がっています。10年前は、高齢者の自宅に端末を置くとか、タブレット端末を提供してくれるところがないと進まなかった。最近ではスマホの普及が進み、高齢者自身が持ってなかったとしても、同居している家族が持っています。
渡邊 亮
ー私が懸念していたのは、機器が使えない人達は、高齢者やスマートフォンを持つのが難しい所得の低い人たちや、なかなかシステムを使いきれない人たちのことです。オンライン診療は物理的アクセスに関する不平等が改善できると思いますが、経済的な格差がある中で、サービスにアクセスしやすい人はよりアクセスしやすくなる可能性があるのでは、と思いました。いまのお話ですと、低所得層や高齢者はなかなか使えない人もいるのかなと思いましたが、そういった懸念はありますか?
前村 聡
オンライン診療の普及において、経済格差による問題は少ないのではないかと思います。それは、生活保護を受けている人でも大抵スマホを持っています。家族間の連絡などに使う必需品になっているからです。例えば母子家庭では、お母さんが働いている間の子供との連絡をどうするのかということで、スマホを最優先で導入している自治体もあるほどで、本当にお金がなくてスマホを持てない人は少ないと思います。
こうした電子機器を使えない高齢者などをどうするかという点ですが、意外とこちらも障壁は低くなってきていると思っています。実際、取材班が取材した高齢者は、使い方を教えればテレビと同じ感覚で使えるようになりました。10年前、5年前に比べると電子機器を使えないという障壁、デジタルデバイドは低くなっています。
© Health and Global Policy Institute
それでも、やはり使い方がわからない人や経済的な理由からスマホは持てないけれどもオンライン診療が必要な方は一定程度存在すると思います。そういう方に対しては医療機関が貸出用の機材を用意して、政府や都道府県が補助金を出すといった方法も検討できるかもしれません。限界集落や医療過疎の地域に医師を1人招き入れいるため、例えば産婦人科の医師に1年間で5,000万円出すという話もありましたが、5,000万円あったら相当数のスマホが導入できますよね。1人の医師を招き入れるよりも、オンライン診療を本当に必要な人に提供していく方がコストも下がるし、導入の際も訪問看護師などがサポートできればいいと思います。
渡邊 亮
ーもう1件課題の部分で伺いたいのは、3月の指針のなかでもエビデンスを蓄積することが明記されました。言い換えるとオンライン診療の有効性や安全性は必ずしも検証しきれていない段階だと思います。もちろん、それを待っていたら何も始まらないのですが、患者の視点から考えた時に、留意すべきことはあるのでしょうか。
前村 聡
オンライン診療の効果を検証するためには、データを迅速に集める体制を作ることが非常に大切です。例えばレセプトの電子化は20年掛けてやっと普及が進み、98%超まで達しました。しかし、約2%の診療所では、いまも紙レセプトによる請求が行われています。そういった医療機関の多くは、オンライン診療の必要性が高い過疎地域や限界集落の個人診療所が多いと考えられますが、そのような医療機関の状況を把握するためには、電子レセプトによる請求ができるように、国が端末のサポートも含めた取り組みをしていくべきだと思います。
さらに電子カルテを普及させることも大切です。できれば、電子カルテの規格も統一を進めてほしいと願っています。電子レセプトと併せて、電子カルテで詳細なデータを集めることで、各医療機関が行う診療内容は翌月にはデータから分かるわけです。そうすると、不適切な診療内容や請求内容、例えば重複処方や多剤処方などを追跡して、社会保険診療報酬支払基金が適切に判断できるようになります。将来的に、レセプトの審査に人工知能(AI)を導入することで、請求時点ですぐに不適切な請求が判別できる仕組みが大事だと思います。
このようにデータを収集することで、医療費だけではなく、医療の質が見える化されることが期待できるのです。そして、診療・請求データを蓄積し検証していくことができれば、オンライン診療が患者さんのQOLを上げたのか、医療費にどのような影響を与えたか、検証ができるずです。
渡邊 亮
-オンライン診療のエビデンスを蓄積するためにも、レセプトやカルテ情報の電子化・標準化が重要だということですね。
ところで、オンライン診療のような仕組みが普及していくことによって医療アクセスの在り方も変わっていくと思うのですが、どういった社会変化が起きていきますか?
前村 聡
その議論の前段階として、オンライン診療が普及していくのかというと、そこのハードルがまだ高いと思います。私はいままでのところ、オンライン診療が普及していくべきだという観点で申し上げましたが、実は、なかなか進まないのではないかと思っています。というのも、医療者側の抵抗感がまだ根強くあるためです。すでにオンライン診療を導入した東京の診療所に聞いても「爆発的な普及はしないのではないか」と言っていました。主な理由としては、導入や運用にかかる費用と診療報酬との兼ね合いが挙げられます。医療費を抑制するためには、オンライン診療の診療報酬は抑制されますよね。そうすると医療提供者にとってのメリットが少なくなります。しかし、診療所や病院も採算性を度外視して経営はできないので、この経済的な課題は大きいと思います。
渡邊 亮
ー社会システムとしてオンライン診療が普及・社会実装されるためには、特に医療提供者側の採算的な課題が大きいかもしれないというご指摘ですね。
前村 聡
はい、その通りです。オンライン診療が導入されれば、患者さんにとっては医療へのアクセスが改善されるためにメリットがありますし、その結果として医療提供者側にとってもメリットが生じる可能性はあるのです。そこで、オンライン診療の導入が地域全体のメリットになるような地域、例えば限界集落にある診療所に対しては、公的資金による支援も含めて検討してはどうでしょうか。
都市部では、限界集落よりオンライン診療の必要性は低いと思います。ただし、長期的な観点から申し上げると、診療のオンライン化によって全国的にデータを集めることは様々なメリットが生じると思います。
もう一つ、オンライン診療の普及における課題として、セキュリティの確保があると思います。今年(2018年)3月に台湾政府の招待で台湾の公衆衛生と医療を視察してきましたが、台湾の医療保険のデータは国が唯一の保険者、シングルペイヤーとして、全て国の責任で情報の安全性を担保しています。一方、日本の場合は多くの民間企業が健康保険を運営しており、安全性をどのように担保していくのかという点は大きな課題だと思います。
渡邊 亮
ー保険者が多数存在することによってセキュリティの確保が課題であるというご指摘ですが、保険者の問題に加えて、様々なプラットフォームが存在することにより、セキュリティの問題は生じないでしょうか。オンライン診療は必ずしも一般化、規格化されているわけではなく、いろんなサービスプロバイダが参入している段階で、様々なプラットフォームが横並びになっています。ある意味で電子カルテと同様の課題かもしれませんが、プラットフォームは規格化されるべきでしょうか。
前村 聡
私も電子カルテに関しては以前から取材していますが、日本でICTに関して問題となるのは、システム全体を規格化しようとすることです。結局、全体を統一することができず、前に進まないことが多かったです。逆に、「これだけは必要ですよ」という最大公約数のような規格を定めて、その先のニーズは個別にベンダーが開発をすれば良いのではないでしょうか。最低限の部分は市場に任せるのではなく、国がきちんと規格を作るべきです。
同様に、オンライン診療でもセキュリティの観点で一定の規格や基準が不可欠だと思いますが、2つのケースを切り分けて考える必要があります。一つは単純に患者さんとコミュニケーションをオンラインで行う場合のセキュリティ、もう一つは各医療機関が持っている診療情報と連動させてオンライン診療を行う場合のセキュリティについてです。単純な患者と医療提供者とのコミュニケーションであれば既存のSNSやアプリを使ってもいいと思いますが、医療機関が持つ診療情報と連動させたオンライン診療を想定した場合は、セキュリティに関する一定の基準が必要になると考えています。
(写真左:渡邊亮 写真中央:前村聡 写真右:佐藤大介)
© Health and Global Policy Institute
渡邊 亮
ーオンライン診療の普及に関して、社会や患者の視点から、様々な課題や可能性について伺うことができました。お忙しい中、ありがとうございました。