認知症研究等における国際的な産官学の連携体制(PPP: Public Private Partnerships)のモデル構築と活用のための調査研究

研究概要

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED: Japan Agency for Medical Research and Development)の助成により、研究開発代表者を当機構代表理事 黒川 清、研究分担者として当機構副代表理事 吉田 裕明および藤田学園藤田保健衛生大学 医学部 脳神経内科学教室 助教新美 芳樹氏が参画し実施した。
本調査研究は、認知症研究等を効果的かつ効率的に推進する国際的な産官学の連携体制(PPP: Public Private Partnerships)の在り方を提案し、日本の具体的な枠組みの構築に繋げること、また日本の知見を国際的な取り組みに反映するための関係政府機関や国際機関等への提言することを目的とした。


【政策提言】国際的な連携体制モデルの開発

我が国で構築すべきPPPにおいては、認知症の人や家族を中心に、アカデミア、製薬企業、医療機関や介護施設、ケア・サービス関連企業、NPO・NGO、地方自治体が集い、認知症に関する課題を客観的データに基づき議論、評価・検証できる場をつくることが有効である。そして、国際的な大規模臨床試験に参加可能な質・量を備えたレジストリの構築、効率的で現実的な認知症ケアの標準化と評価法の開発に優先的に取り組むことが現実的である。さらに、社会の理解や受容を促進する普及啓発機能、高齢社会先進国としてアジアにおいてもリーダーシップを発揮できる機能を併せ持つことが強く求められる。

  • PPPを推進するためのステークホルダー
    認知症対策のための産官学の連携体制を推進していくためには、関連する各ステークホルダーは、認知症の人・家族とのつながりだけでなく、ステークホルダー同士が、より相互に連携し合うことが必要である。さらに今後は認知症の人も、認知症に関する社会的課題の解決に取組む一員として共に活動できるような社会にすることも目指すべきである。
  • PPPのあるべき姿
    本研究が提案する認知症PPP体制によって実現を目指す認知症分野および社会の将来像を以下に示す。これらの将来像を見据えつつ、当面のビジョンやミッションを設定してロードマップを作成していく必要がある。

    • 実効性の高い認知症PPPの追求
      •  -認知症の人や家族からのニーズを起点とした研究テーマや活動テーマが創出されている。
      • -認知症の人や家族からのニーズを起点とした研究テーマや活動テーマが創出されている。
      • -投資された研究や活動に対して、認知症をとりまく課題全体を踏まえた優先順位付けができている。また、評価、効果検証が継続的に実践されている。
      • -研究・開発等の知見が集約されており、すべてのステークホルダーが認知症研究・サービス等のデータにリーチできる、シェアできる。
      • -民間の積極的な投資が喚起され、民間セクターによる認知症対策に対する資金投資や参画の原動力となっている。
      • -ICTやロボットのような科学技術イノベーションも積極的に受け入れ、活用できる。
    • 認知症PPPが最終的に目指す姿
      •  -認知症対策を多面的かつ一体的に解決することで、認知症問題の背景に潜む日本の社会課題(少子高齢化、女性の抱える問題、介護離職等)の解決を目指す。
      • -高齢社会の先進国として、国際的な対策や活動に対しリーダーシップを持って推進し、国際的な研究等活動のハブとして機能する(アジア健康構想との連動)。
  • 我が国で構築すべきPPPの果たすべき機能や方向性
    我が国が長寿社会としての日本の社会的課題解決に挑み、高齢社会先進国としてアジアにおいてリーダーシップを発揮するため、以下の機能を有する「認知症産官学民プラットフォーム」を設置すべきである。
    1. 新組織は、認知症の人・家族を含めたステークホルダーが連携する場を有し、認知症に関する課題を客観的データに基づき議論、評価・検証する。

    2. 新組織は、社会の理解や受容を促進する普及啓発に取組み、国際的にも情報発信する。

    3. 新組織は、認知症ケアに関する技術開発および技術の客観的評価の開発に優先的に取組む。

    4. 新組織は、国際的な大規模臨床試験への参加などの国際連携を進めるため、レジストリの整備など、臨床試験実施基盤を強化する。

調査結果

国内外におけるPPPを活用した認知症研究等に関する事業や組織等の調査・総括

国内外の認知症研究等においてPPPを活用したプロジェクトや実施組織を調査するとともに、PPPの形式をとって研究活動を進めている代表的な組織体について調査を行った。

■世界の認知症研究プロジェクト-多施設共同の大規模研究・パートナーシップ

略称WW-ADNI DIANA4 study
正式名称World Wide Alzheimer's Disease Neuroimaging InitiativeDominantly Inherited Alzheimer NetworkAnti-Amyloid Treatment in
Asymptomatic Alzheimer’s study
開始年200320082014
運営Alzheimer's AssociationWashington University School of MedicineAlzheimer's Therapeutic Research
Institute
協力機関企業25社、アカデミア150団体、Foundation for the National Institutes of Health、The National Institute on AgingThe National Institute on AgingThe National Institute on Aging 、Eli Lilly and Company、慈善団体等
目的軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)とアルツハイマー病の進行速度の定義、臨床研究参加者の適切な選定方法の開発、多施設間でのデータ共有可能性の高い画像スキャン実施方法の開発、生体試料の収集方法および検査方法の標準化遺伝子変異によって生じる、希少アルツハイマー病の解明抗アミロイド抗体を用いたアルツハイマー病の重症化予防法の開発

■世界の認知症研究プロジェクト-大規模研究支援組織

略称IMI EPADDPUKGAPAMP IADRPGAAIN
正式名称Innovative Medicines InitiativeEuropean Prevention of Alzheimer Dementia ConsortiumThe MRC Dementias Platform UKGlobal Alzheimer's PlatformAccelerating Medicine
Partnership
International Alzheimer's and Related Dementias Research PortfolioThe Global Alzheimer’s
Association Interactive Network
開始年2008201520142013201420102010
運営European Union、European Federation for Pharmaceutical Industries and Associations(EFPIA)Serge Van der Geyten氏(Innovative Medicines Initiative(IMI))Medical Research CouncilThe GAP FoundationFoundation for the National Institutes of Health(FNIH)NIH、National Institute on Aging and the Alzheimer’s AssociationUSC Laboratory of Neuro Imaging 、USC Mark and Mary Stevens Neuroimaging and Informatics Institute 、Keck School of Medicine of USC
協力機関Janssen Pharmaceutical、Eisai、Bayer 等欧州委員会、 欧州製薬団体連合会(EFPIA)の会員企業等、35機関National Institute on Aging (NIA)、the National Institute of Bioimaging and ioengineering(NIBIB)、Araclon Biotech、Cambridge Cognition、MedImmune, the global biologics research & development arm of AstraZeneca、GlaxoSmithKline、Invicro、Ixico、Janssen Pharmaceuticals, in collaboration with Johnson & Johnson Innovation、SomaLogicJanssen Pharmaceutical、
Eli Lily and Company、
Takeda Pharmaceutical
Company、Lundbeck、Roche
Food and Drug Administration(FDA)、 National Institutes of Health (NIH)、AbbVie、Biogen、Bristol-Myers Squibb、
GlaxoSmithKline、Johnson &
Johnson、Eli Lily and Company、Merck、Pfizer、Sanofi、Takeda Pharmaceutical Company、Alzheimer‘s Association、Alzheimer’s Drug Discovery、American Diabetes Association等
Administration on Aging, CDC、Alzheimer's Association、BrightFocus Fundation、Canadian Institute of Health Reserch、Alzheimer's Research UK等 10か国40団体The Alzheimer's Association、DIAN、Aibl、ADNI、I-ADNI、CAMD、等24パートナー
目的ワクチン・医薬品・抗生物質などの治療法の開発認知症発症に関連するリスク要因の同定に関する研究、早期の認知症予防のための新薬開発MCIとアルツハイマー病の進行速度の定義、臨床研究参加者の適切な選定方法の開発、臨床研究参加者の適切な選定方法の開発、生体試料の収集方法および検査方法の標準化アルツハイマーの治療薬・診断薬の研究開発、アルツハイマーの治療薬・診断薬開発のための臨床試験への参加者登録の簡易化、医薬品開発研究の連携の推進アルツハイマー型認知症、2型糖尿病、全身性エリテマトーデスへの治療薬のバイオマーカーに関する研究開発AD研究およびAD研究関連資源への投資状況、主要なファンドの把握および比較、The Changing Landscape of AD Researchの評価、AD研究協力体制の可能性の同定、資金提供の不足・過剰な分野の明確化AD関連のデータを独立したレポジトリに蓄積する、蓄積したデータを共有するバーチャルコミュニティの確立

■日本版の認知症研究プロジェクト-多施設共同の大規模研究・パートナーシップおよび大規模研究支援組織

略称J-ADNIIROOPオレンジレジストリ
正式名称Japanese-Alzheimer’s Disease
Neuroimaging Initiative
Integrated Registry Of Orange PlanOrganized Registration for the Assessment of dementia on Nation-wide General consortium toward Effective treatment in Japan
開始年200720162015
運営東京大学国立精神・神経医療研究センター、国立医療研究開発機構国立長寿医療センター、国立精神・神経医療研究センター、認知症介護研究・研修センター、厚生労働省
協力機関大学等約30施設国立長寿医療センター、横浜市立脳卒中・神経脊椎センター、大阪市立大学医学研究科大学等約30施設
目的AD治療薬の薬効評価基準作成のための他施設共同臨床研究。健常高齢者、MCI患者、早期AD患者に対して2年~3年の追跡調査認知症が発症する前の症状をとらえ、生活習慣の改善等により発症を予防する因子を解明。また、認知機能の改善が期待される薬の開発のための臨床研究や治験促進健常者、前臨床期、MCI、軽度認知症、中等度認知症、進行期認知症の方まで様々な人の情報収集により、認知症の適切な医療・ケア手法を確立

調査の結果、その設立意義、目的、ゴールの明確化等、PPPにとって重要な要素が明らかになったほか、民間投資の誘引や、広報の手法等につき示唆を得た。また、各研究の日本版研究等の調査で、国際的なPPP参加への強いニーズが確認された。今後、国際的な臨床試験へ日本が参画するには、適切な対象者のリクルート促進、グローバル言語で研究を支援する人材確保等国際連携に対応可能な臨床試験実施基盤の強化、これらを可能にする安定的な資金の確保が必要である。


国内外の先進的な認知症に関する取り組みおよび認知症以外のPPPによる研究推進の先行事例調査

PPPによる推進が期待できる創薬以外の事例として、ケアや関連サービス提供者、自治体、まちづくり、ロボット、IoTの研究者等に対してヒアリング等調査を行った。また、PPPによる認知症以外の研究推進の先行事例に関してもヒアリング調査を行い、PPPの仕組みづくりに対する参考とすることとした。

■先進的な認知症に関する取り組みを進めるステークホルダーが抱える課題やニーズ

ステークホルダー各ステークホルダーの抱える課題・ニーズ
認知症の人と家族
  • 公的サービス以外の支援が不足している。
  • 認知症当事者に対する企業の理解が十分でない。
  • 認知症の人への対応を起点とした高齢者全体が暮らしやすいまちづくりが必要。
  • 認知症の人は支えられる立場ではなく、社会を支える一員にもなりうることを認識してほしい。
医療・介護サービス提供者
  • 効果の検証された技術、サービスを取り入れたい。
  • 介助者の負荷軽減のための技術が必要。
治験・臨床研究に関わる企業、アカデミア
  • 認知症治療のためのエビデンス蓄積や創薬には、長期間、大人数、高額な資金が必要。
  • プレクリニカル研究においては、検査、投薬等費用に健康保険が適用されないため、臨床研究にも費用がかかる。
  • プレクリニカル研究における被験者のリクルートが困難(診療の場以外でのリクルートが必要)。
  • 検査方法や診断基準の標準化が必要。
  • 多施設共同の大規模臨床研究を行う場合に統合的に支援する基盤が整っていない。
ケア改善・促進に関わる技術・サービスを提供する企業
  • 効果のエビデンスや費用対効果が明確に示しにくい。
  • 民間サービスの効果検証や効果が認められるサービスの普及促進が必要。
  • 民間サービス・研究計画の社会的成果に対する投資も必要。
  • 現場(介護施設等)と研究機関のコミュニケーションが不足。
先進的な取組みを行う自治体
  • 地方自治体やNPOによる取組みの横展開等、地域を超えた広がりが難しい。
  • コミュニティやソーシャルネットワーク、医療機関等との連携が必要。
  • 民間で蓄積されたデータの有効活用も必要。
全体
  • 多様なステークホルダー全体で明確なビジョンやミッションを共有することが必要。
  • 外部の専門家の参画、利益相反にも配慮した中立的な立場でのマネジメントが必要。
  • レジストリの運営にはセキュリティ面、運用面での維持費が必要になり、年度ごとの公的研究費での運用は難しい。

■我が国のPPPの仕組みづくりに対する示唆

分類PPPの仕組みづくりに対する示唆
ビジョン、ミッション、バリュー
  • 達成したい目的を明確に設定する必要がある。この目的あるいはその達成方法を、他の取り組みと差別化しなければ、資金調達は難しい。
  • 資金提供元の意向とプロジェクトの実施における意思決定プロセスが明確に説明できる透明性や独立性が求められる。
ビジネスモデル
  • 持続的なビジネスモデルを作るために、いずれはそのモデルに資金供給できる資金提供者が参画している必要がある。初期投資は政府や財団等が担うことも考えられる。
  • エビデンスに基づく科学的なプログラムの構築を常に推進することが最も重要。
運営体制
  • 強力な資金調達チームとコミュニケーションチームが必要。
  • 認知症は多方面(治療、ケアから家屋、モビリティまで)に関わる課題であるため、マルチステークホルダーが参画すべき。その場合は、継続的に構成員の目的意識を合わせる努力が必要。
  • 次世代の人材育成の観点からも、多様な世代を巻き込む必要がある。
  • 認知症の人や家族をどのように意思決定の場に主体的に関与してもらうかが重要。
広報
  • 市民に対する教育や意識の普及啓発が、官民連携で必要。
  • 科学的知見に立脚したメッセージの広報活動も、社会における認知症の正しい理解に繋がるため重要。
他組織との連携
  • 民間の保険産業などによる調査や研究は多様であり、これらの研究成果を政府が活用できる仕組みがあると効果的。
  • 各所で集めたエビデンスを、できるだけシェアして利用できるように努めるべき。
制度設計
  • PPPのあり方や介護ケアの提供システムにおいて、絶対的な正解やシステムはない。各国や各地域の文化を軸にして、マルチステークホルダーが議論し、ボトムアップで検討できる設計にすべき。
  • 医療や介護分野は政府の制度変更などにより民間が影響を受けやすく、制度設計の段階で、民間が協働できる仕組みが必要。

調査の結果、事例共有や、技術の客観的評価等の点で、PPP活用のニーズが確認された。また、PPPの仕組みについては、多くのステークホルダーが連携した組織で研究・開発を推進していくためには全体で明確なビジョンやミッションを共有することが重要との確認を得、更に、事業の透明性や公平性の確保等、マネジメント機能の要諦を把握した。


世界認知症会議(WDC: World Dementia Council)との意見交換、モデル構築、WDC への提案

関係者への事前ヒアリングから、WDCやグローバルレベルでの政策立案の場において、どのような役割が日本に期待されているかという点に対し、国内ステークホルダーの関心が高いことが明らかになった。これを踏まえたWDCとの意見交換の結果、WDCが注力する各分野の現状や今後の課題について、WDCが調査することとなった。

WDCからの日本への期待や示唆

項目日本への期待や示唆
Finance
  • 日本の認知症研究への投資額は、G7諸国の中では最下位で、全研究費の約0.2%でしかない。したがって、日本は迅速に認知症研究への投資額を増やすと同時に、Dementia Discovery Fund(DDF)等成功している画期的な官民連携モデルを積極的に取り入れるべきである。
Integrated Drug Development
  • 日本政府は今後も医薬品医療機器総合機構(PMDA: Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)を主体に、各国規制当局と協力体制を取りつつ、アジア圏のリーダーとしての地位を確立するべきである。
  • また、厚生労働省や保険者は、認知症薬の薬価や保険適用範囲に関する具体案を示す必要がある。また、各国と連携し、どのようなアプローチ(薬の評価方法等)を取るべきか、方針を定めるべきである。
Research, Open Science and Data
  • 日本は、より積極的に各国の研究センターと協力すべきである。その1つの案として、AMEDが Neurodegenerative Disease Research (JPND)に参加する案が挙げられている。また、日本国内で多種データを共有できるプラットフォームも確立してほしい。
Care
  • 日本は超高齢化社会として、認知症ケアのベストプラクティス、経験等を世界に発信をし、共有すべきである。特に、新オレンジプラン等の社会を広く巻きこんだ国の施策は、他に例がなく注目をされている。また、ケアの現場におけるICTの活用も、日本が注目を浴びている分野である。
  • Dementia Friendsの取り組みは非常に評価できる。今後他国で同様のプログラムを展開するためにも、日本における関連プログラムの評価を促進すべきである。
Risk Reduction
  • 日本は、世界保健機関(WHO: World Health Organization)が掲げているリスク低減の勧告をアクションプランに埋め込むべきである。また、超高齢化社会の特色を生かし、疾病の進行を遅らせるリスクファクター関連の研究も積極的に行うべきである。

調査の結果、我が国のWDCへの貢献の重要性、効果的な創薬実現への長期的で戦略的な対応の必要性が改めて認識された他、ケアやICT活用分野における貢献の重要性が増大していることを把握した。


世界認知症会議(WDC: World Dementia Council)との意見交換、モデル構築、WDC への提案

認知症研究等における国際的なPPPの現状についての多国間比較分析を行い、我が国の認知症研究における産官学の連携体制に必要とされる要素や機能を明らかにした。

  • 認知症患者数
    経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)のHealth at a Glance 2015におけるOECD加盟国の認知症患者数の予測報告によると、日本は罹患率、将来の伸び率ともに大きい。西欧・北欧諸国は総じてOECD加盟国の中で高水準であり、チリや韓国、ブラジルは今後の伸び率が高い傾向がある。
  • 認知症関連の研究開発投資
    日本の健康関連の研究開発予算(GBAORD: Government Budget Appropriations or Outlays on Research and Development)はアメリカ、イギリスを除く他国と比較して同程度であるのに対し、認知症関連、神経変性疾患(NDD: neurodegenerative disease)に対する研究開発の資金投資額は少ない。

出所:OECD Health Policy Studies Addressing Dementia

  • 認知症に関する社会的コスト
    日本における認知症に関する社会的コスト(2014年の推計値による)は14.5兆円である。うち、介護費やインフォーマルケアコストが87%を占めると推計されている。また、世界の認知症に関するコストの割合は、特にアジアは医療コストが少なく、インフォーマルケアコストの占める割合が高く、欧米はソーシャルセクターのコストの占める割合が高い傾向が見られる。

出所:World Alzheimer Report 2015

  • 国家戦略・ガイドラインの整備状況
    アメリカではNational Alzheimer’s Project Act(NAPA)と呼ばれる国家アルツハイマープロジェクト法が定められており、イギリスや日本においても、国家戦略としての政策方針を打ち出している。アメリアカのような基本法を制定することも今後検討が必要である。また、治験に関するガイドラインは欧米に比べて日本は十分に整っていない状況であり、今後のさらなる整備も課題である。

■欧米と日本における認知症に関する国家戦略とガイドライン

  アメリカイギリス日本
認知症に関する国家戦略The National Alzheimer’s Project Act(NAPA)Living well with dementia: A National Dementia Strategy認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
ガイダンス・ガイドライン名称Guidance for Industry, Alzheimer’s Disease : Developing Drugs for the Treatment of Early Stage DiseaseDraft guideline on the clinical investigation of medicines for the treatment of Alzheimer’s disease and other dementiasアルツハイマー病(AD)治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン
説明臨床試験に参加をする早期段階AD患者の診断法・患者選択の方法および同疾患が進展する可能性のある患者の診断法、臨床試験エンドポイントの設定法、治療アウトカム測定のためのバイオマーカーの使用法等についての現在のFDAの考え方。早期AD患者、無症候段階のAD患者を含むADの新しい診断基準を作成した場合の影響評価、ADの進行段階別の地用アウトカム選択とその評価ツール、バイオマーカーの有効な使用法、認知症治療薬の長期的な有効性と安全性試験のデザインについて。現在作成中。

調査の結果、我が国は欧米先進国と一致した方向性を持つが、更に国際連携を進める為に、関連ガイダンス・ガイドライン整備が必要と示唆された。


産官学、認知症の人とその家族等を含む委員会の設置及び意見交換会の開催

本研究の実施にあたり、産官学、認知症の人とその家族等が集まりPPPによる調査研究の推進に向けた意見交換を目的とした会合を開催した。(※いずれも所属・役職は当時のもの)

【専門委員会】

■役割
認知症研究に関する専門的知見の提供や調査研究に関する議論、研究への助言を行う。

■メンバー(敬称略)

  • 秋山 治彦(一般社団法人日本認知症学会 理事長)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 )
  • 岩坪 威 (東京大学大学院医学系研究科 教授)
  • 佐渡 充洋(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 専任講師)
  • 徳田 雄人(NPO法人認知症フレンドシップクラブ 理事)
  • 堀田 聰子(国際医療福祉大学大学院 教授)
  • 武藤 真祐(医療法人社団鉄祐会 理事長)
  • 山本 朋史(当事者・週刊朝日編集部 編集委員)

【アドバイザリー・ボード委員会】

■役割
研究代表者の求めに応じて調査研究に対する助言や提案を行う。

■メンバー(敬称略)

  • 秋山 弘子 (東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授)
  • 岩沙 弘道 (三井不動産株式会社 代表取締役会長)
  • 大塚義治 (日本赤十字社 副社長(元厚生労働事務次官))
  • 鹿島 章 (PwCコンサルティング合同会社 代表執行役会長)
  • 喜連川 優 (国立情報学研究所 所長)
  • 小谷 秀仁 (パナソニック ヘルスケア株式会社 代表取締役社長)
  • 高見 国生 (認知症の人と家族の会 代表理事)
  • 丹呉 泰健 (日本たばこ産業株式会社 取締役会長(元財務事務次官))
  • 鳥羽 研二(国立長寿医療研究センター 理事長
  • 内藤晴夫 (エーザイ株式会社 代表執行役CEO)
  • 永井 良三 (自治医科大学 学長)
  • 長谷川 閑史(武田薬品工業株式会社 取締役会長)
  • 樋口達夫 (大塚製薬株式会社 代表取締役社長)
  • 廣井 良典 (京都大学こころの未来研究センター 教授)
  • 藤田 和子 (日本認知症ワーキンググループ 共同代表)
  • 水澤 英洋 (国立精神・神経医療研究センター 理事長)
  • 宮田 満 (日経BP社 特命編集委員)
  • 山村 輝治 (株式会社ダスキン 代表取締役社長
  • 横倉 義武 (公益社団法人 日本医師会 会長)
  • D・リスバーグ(株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン 代表取締役社長)
  • P・ジョンソン(日本イーライリリー株式会社 代表取締役社長)


※本ページの内容は、本研究成果を発表した2017年3月時点の情報です。