平均寿命の進展に伴い、加齢によって起こり得る課題と向き合うことが求められるようになった。その代表的なものの1つが認知症であり、その数は2015年時点で世界に4,680万人と推計され、2030年には7,470万人にまで増加すると言われている。さらに高齢者に限らず、若年層の認知症も課題とされている。
一方、認知症のアルツハイマー病をはじめとする原因疾患の根本治療薬は発見されていない。新薬の開発だけでなく、認知症と上手く向き合いながら暮らせる社会の構築も必要とされており、認知症対策はグローバルレベルで喫緊の課題となっている。
認知症
日本における認知症施策
日本における認知症施策の変遷
新オレンジプラン(2015年)
認知症施策推進大綱(2019年)
日本医療政策機構の取り組み
日本医療政策機構(HGPI)では、非営利・独立の医療政策シンクタンクとして、認知症をグローバルレベルの医療政策課題と捉え、世界的な政策推進に向けて取り組みを重ねてまいりました。認知症政策の推進に向けたマルチステークホルダーの連携促進を基盤とし、「グローバルプラットフォームの構築」「当事者視点の重視」「政策課題の整理・発信」を柱として、多様なステークホルダーとの関係を深めながら、活動を行っています。
日本では厚生労働省が2004年に呼称を「痴呆」から「認知症」へと変更してから約15年が経過しました。多くの関係者の尽力により、認知症への理解は格段に向上し、最近では認知症の本人が自らの経験や想いを発信することも当たり前の社会に変わりつつあります。今や、認知症は誰しもなり得るものであり、それに向け備えるための取り組みが必然であることが共通の理解となっています。今後は、それらの取り組みをより加速させ、効果的・効率的に進めていくために、マルチステークホルダーがさらに連携することがカギになります。例えば、難航する創薬においては、国・地域や企業、アカデミアを超えて、政府のリーダーシップによりグローバルな官民連携体制(PPP: Public Private Partnerships)を築くことで、データプラットフォームの構築、共同治験の推進など、創薬研究を加速させることが期待されています。本人や家族のQOLを高める様々な商品・サービスの開発促進の進展に向けて、当事者目線で商品・サービスを評価する仕組みの在り方や、ヘルスケアに限らず多様なアイディアを持つ企業の参画を進展させることも必要不可欠です。
そしてこうしたマルチステークホルダーの連携は国レベルの大きな規模とは限りません。地方自治体において、地域社会と地域に存在する様々な企業が小さな連携を積み重ねることも、認知症の人や家族のQOLを高めるためには欠かせません。これまでの医療・介護・福祉領域中心の体制から、市民社会・産業界・国や地方自治体そしてアカデミアが広く、大小様々な枠組みで連携を深めることを後押しする認知症政策の実現に向けて、日本医療政策機構では引き続き提言と実践の両輪で後押しをしていきます。
一方で、世界認知症審議会(WDC: World Dementia Council)をはじめとした国際的なネットワークをさらに強化することも大きなミッションです。認知症への取り組みは、一国では解決しえないグローバルレベルの政策課題であり、どのステークホルダーにあっても国際的な連携は欠かせない時代となっています。当機構では、政策の相互参照や革新的な政策に向けた知見を共有・議論する場を作ることを通じて、ハブとしての役割を果たし、グローバルレベルで「市民主体の認知症政策の実現」を目指します。
認知症研究等における国際的な産官学の連携体制(PPP: Public Private Partnerships)のモデル構築と活用のための調査研究
国際連携
普及啓発
最終更新日:2023年4月